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一度だけ

自分の演奏は、何度も観てくれる人もいるけど、やはり一度しか観ない人の方が多いだろうから、そのことを意識して演奏する。大事にしたい意識なのに、いつのまにか忘れていて、ふと、あぁそうだったと思い出す。

11月11日の演奏は、そんな意識の中で自分の立ち方がしっかりしたのか、大きな手応えが感じられた。この晩秋の夜、スティルライフの物音による語りかけがお客さんを包み込み、大上さんのギターの鳴りから鮮烈な多幸感が拡がって、それに続く機会を得ての充実だった。

少々変わった試みもあり。会場PAを使うのは自分だけで、スティルライフは生音、大上さんもアコギのみ。それで思いつきを試させていただき、会場PAのスピーカを左右でなく、客席をはさむ形で前後に配置してみた。つまり一つはステージで演奏する自分の側、もう一つは客席の後方に。いい効果を生んだと思う。

多くの方に演奏機会をいただく。その一つひとつが有り難く、大切に演奏する。そうした中でも、やはり自分が最も「懸けている」のはソロ演奏なのだ。ここ10年ほどはそんな気持ち。

ところで、一度だけ聴いてくれるオーディエンスへの意識というのは、ライブだけでなくCD作品にも言えるのではないか。もちろん繰り返し聴かれるCDとして作る。でも一度しか聴いてくれないとしたら、何を伝えたい?そこを考える。CD作品は何度も聴いてもらえる、という思い込みを捨てる。これは今まで気がつかなかった視点だ。

tamaru
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